今週のお題「最近おもしろかった本」
頭の中が“ひとり王国状態”になった時
このところ、やっかいな人間関係の用事がいくつかありました。
緊張状態に耐えられなくなったのか…、ある日気がつくと、自分の頭の中が“ひとり王国”状態になっていました。
ストレスに弱いのか、時々なります。
自分の中に、自分にあれこれと過度に要求する、“王様”がいるような感じです。
現実の国にも、自国や他国の人々に無理難題を要求する権力者はいます。
そちらも、もちろん困るのですが…、“ひとり王国”では、王様が召使いも兵士も兼ねています。
王様が暴走した時の国の崩壊は、現実の国よりも早いです。
なんとかしなければ…。
暴走する王様への対処法
暴走する王様への対処法は、私の中ではルーティン化しています。
「アラビアンナイト」の語り手・シェヘラザードと同じく、
- 王様に娯楽を提供し、無理な要求から気をそらさせる。
- 娯楽の内容に“無理な要求はやめた方が良いよ”、“もっと穏便な解決策を見つけた方が、あなたも得するよ”などのメッセージを込める。
というもので、提供する娯楽も「アラビアンナイト」を使います。
子どもの頃、「シンドバッド」や「アラジン」、「アリババ」などのお話で、お馴染みだった「アラビアンナイト」。
それらのお話には、残酷な「枠物語」があることを知ったのは、大人になってからでした。
実は残酷な「枠物語」があった「アラビアンナイト」
【枠物語のあらすじ】
最愛のお妃の不倫現場を目撃し、激怒してお妃を処刑したシャフリヤール王。
その後、女性不信に苛まれ、処女を召し出して一夜を共にし、翌朝に処刑、ということを繰り返すようになります。
宰相の娘・シェヘラザードはなんとかして王の心を変えようと、志願して王の元へ向かいます。
シェヘラザードは王と一夜を共にした後、物語を語ります。
続きが聞きたくなった王は、一日、また一日と処刑を先送りにし…。
暴走する王様に対処しなければならない私に、ぴったりの物語です。
「図説・アラビアンナイト」について
今、手元にあるのは、「図説・アラビアンナイト」(著者:西尾哲夫、発行:河出書房新社)という、イラストが豊富な薄い本です↓。
「アラビアンナイト」の全訳版は、とても長いです。
例えば、アラビア語からの原典訳で、正統派と言われる“東洋文庫「アラビアン・ナイト」”(訳者:前嶋信次、発行:平凡社)で、全18巻…。
「千一夜物語」というだけあります。
おまけに、“ガラン版”、“バートン版”など、各訳者名がタイトルについていることが多く、各訳者ごとに特色があり、万華鏡のようです。
長すぎて読みづらい全訳本より、イラストが多い「図説・アラビアンナイト」の方が楽しめるので、王様には向いていると思います。
この本には、主な物語の要約版(それでも、子供向け絵本と比べると、十分長いです)と、作品背景などの紹介や、数多く出版されたアラビアンナイト絵本のイラストなどが紹介されています。
「シンドバッド」や「アラジン」、「アリババ」は、元の「アラビアンナイト」には、どうも入っていなかったみたいで、驚きました。
だって、どれも「アラビアンナイト」の物語として有名です。
絵本や映画も制作されています。
「シンドバッド」や「アラジン」は、「アラビアンナイト」を最初にヨーロッパに紹介したガランが収録したようです。
「アラジン」が原典にないことは、どうも知っていたみたいで、じゃあなぜ?…。
そのミステリーのような裏話も、この本に紹介されています。
掲載されている色んな画家たちによる挿絵は、昔、本屋や図書館で見て、高くてあきらめた本たちの挿絵でした。
薄い本なので全部ではないけれど、一冊でまとめて見ることができるのが、嬉しいです。
とても綺麗で、うっとりします。
…それにしても、描いた人達は、「シンドバッド」も「アラジン」も、原典にはないことを知っていたんだろうか?
…などと思っているうちに、私の中の王様の暴走も次第に鎮静化され、そういえば、私は平民でもあるんだった、と思い出すことになります。
…そして、私の中の王国にも平和が訪れるのでした。
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ご覧いただき、ありがとうございました。